徒然塚

ヅカあればこそ、生きる喜び

宝塚雪組「星逢一夜」

9月頭に観劇しまして、9月の終わりに2回観てきました。

初回、1/3は泣いていた私でございます。笑
そして、2回目、大丈夫…なはず…!と思ったのもつかの間、逆に結末を知っているが故の涙、涙、涙。
3回目。ようやく順応したわ…と思いきや、最後やはりハンカチ1/2濡らす始末。

一回目観劇した時は、日頃のストレスよっぽどたまってんのね、、と友人にドン引きされるほど泣いてしまったゆえ、回数こなしてから冷静になってまた色々考えよう、、と思って感想を保留にしていました。

上田先生の大劇場デビュー作です。
東京千秋楽も近いですが、たくさん【ネタバレ】ありますので、ご注意ください。一応、、

まずブルー基調で夏らしく涼しげなポスターから素敵素敵!青好き!

ラテンショーが当たる公演のときって大劇場は夏真っ盛りの時にやるけど東京劇場だとちょっとズレてるから、いつも若干の残念さがあります…ムラいける方羨ましい…


物語は、三日月藩の蛍村の百姓の子供達と、三日月藩の藩主、お殿様の子供であった紀之介の出会いから始まる。

彼は、居場所を探していた。

お殿様の子供と言えど、側室の子であり、次男であった紀之介は、お城から居なくなっても自分を気にする人などいないと知っていた。

そんな紀之介が好きだったこと。
星を見ること。

だから、星を見るための櫓を建てよう。

そして、泉と源太、百姓の子供達に出会う。

子供時代をそのまま演じるの、初めてだったのですが、全然違和感なくて驚きました。これってすごいことですよね。

紀之介はいいとこのお坊ちゃん感すごいし、おさげの泉かわいいし、なにより源太が愛おしくて…!だいもんあんな声でるんだ…めちゃかわ…!

源太はクラスに1人はいる器用で賢い子。こういう子は前に出たがらずともだいたいみんなの中心にいてリーダーになっていくんだよね。

まなはるの短髪も素敵。そして大ちゃんひたすらでかくて笑った。

三日月藩は貧しい場所だった。百姓の子供達の親は、最近あった一揆のために、獄門にされていた。
泉は母を早く亡くし、父親と弟と暮らしていたから、父親を失ったダメージは大きく、藩主の息子である紀之介は憎むべき相手だった。

しかしそんなことは知らず、一緒に星を見た。

星は美しくて、明日何を食べるかの心配を忘れられたし、泥だらけの足下から顔を上げれば貧しさを忘れられた。

紀之介はお殿様の子供だったけど、隣の藩の水泥棒相手に本気で闘ってくれて、父親とは違うのかもと思えた。


孤独な紀之介の、初めての友だち。
初めての居場所。


しかし、江戸にいる兄が亡くなったことで、藩主の跡取りとして江戸に上がることになってしまった紀之介。

すっかり遊び仲間となっていた百姓の子たちと離れ離れになる道を選ぶのは、気ままに生きてきた紀之介にとっては難しいものだったが、側室である母に諭される。
江戸に上がるかどうかは自分で決めなさい。お前は皆が思っているより賢い子だ、と。

"みそっかすの次男坊"として育てられた紀之介は、初めて母に認められていたと知る。

そして、大好きな故郷にも、星見櫓にも、仲間たちにも、幼なく淡い恋心にも別れを告げ、紀之介は晴興と名を改め、江戸に上がる道を選択する。


江戸では、国を治める将軍、徳川吉宗と出会う。

吉宗は、星を見る晴興の賢さを見抜き、将軍の御用取次としての役目を与える。晴興は父亡き後、三日月藩の新たな藩主として、故郷に戻る。


そして、星逢祭りの夜、再会する。
かつて、淡い恋心を抱いた娘に。


星見櫓での再会、本当に素敵でした。一番好きなシーン。だいもんは出てこないけど。笑

なにより、日本語の美しさ。
みゆちゃんは声の出し方がとても上手いと思う。聞き取りやすいし、頭に入りやすい。


かつて2人の間に芽生えた淡い恋心が、はっきりと輪郭を捉えた。

しかし、泉は源太に嫁ぐこと、晴興は吉宗の姪の貴姫との結婚が決まっていた。

源太は、晴興に頭を下げる。
泉を幸せにしたい、だから、徳川のお姫様との縁談なんて断って、自分のかわりに泉をもらってやってくれ、と言う。

源太の優しさと、大きさ。

でも誰の想いも叶うはずもなく。


すでに、運命は決められているのだという、予感。


江戸に戻った晴興は、吉宗の右腕として、享保の改革という大きな政を始める。

大きな政を成すために、小を捨て大に就く、段々と、人間らしさのない、痛みを感じない人形のような男になっていく。

期待などされず自由に決ままに生きてきた晴興が吉宗という大きな存在に認められた。その期待に応えようと生きてきた。そうやって生きていくために、心を殺すことで自分を守り続けた。


そんな折、三日月藩に一揆の動きがあると知らされる。吉宗は、晴興に、自らの手で一揆を収め、長くならずに戻ってくるよう告げ、送る。


三日月藩で一揆を束ねていたのは、源太だった。
貧しい土地で朝三日月藩の百姓たちは、年貢の取り立てが厳しくなってから、生活に困窮していた。


晴興は、源太に勝ち目のない一揆を止めさせるよう説得するが、源太は享保の改革を止めてくれと請う。この一揆を止めさせるにはそれしか方法がない、と。
しかし三日月藩のためだけに、この大きな政を止めることができないことな
ど明らかだっだ。


そして、一揆が起こる。

領民達は次々に討たれていく。それを見て、晴興は自分の生まれた立場を改めて知ることとなる。

一揆を収めるため、晴興は領民達の前に姿を現し、主謀者である源太と一対一の勝負をすることとなる。

打たれても打たれても立ち上がる源太。


源太は星を見上げることができた。皮肉にも、それはかつての紀之介が教えてくれたこと。
空に瞬く無数の星は、いつも正しく廻り、変わりなく輝き続ける。

人は、その下に、等しく無力なのだ。

時代の大きなうねりにのまれ、運命に身を委ねるしかないのだ。


源太は晴興との一騎打ちのち、全てを悟ったかのように、星を見上げて、ふと笑う。

晴興も、星を見上げる。


源太の命が奪われたことも、
それを奪ったのが晴興だったことも、

全て、星の下に決められていたこと。


晴興ははじめからおわりまで孤独な人だったのだなあと思う。


島流しの前夜に、晴興は戻る。居心地の悪さを忘れられる唯一の場所であった星見櫓に、また自分の居場所を探しに。

泉は、そこで、かつての紀之介にもらった刀で源太の仇をとろうとする。
しかし、ずっとずっと想い続けた人の命を自らの手で奪うことなどできるはずはなかった。

そして最後に、初めて、晴興が泉に伝えた本音。

一緒に、誰も自分たちを知りえない場所に逃げて、新しい人生を共に歩んでくれるかと。

そして、口に出してみて、再び知る。
晴興と泉の歩く道が、一度交わってしまったことが間違いであったのだと。

泉の道はここで子供たちと生きる道。

2人の道は再び交わりまた分かれた。

晴興は新しい道を歩み始める。



正直、初回では、源太が亡くなったあと、星見櫓で晴興と泉が会う場面、源太はもういないのに、こんな展開ひどい…!とヒステリックになりました。笑

だけど、こういうことかなと。

自分の新しい居場所に生きると決めてから、晴興がずっとずっと心にしまって来た唯一の願いを口に出したことで、操り人形だった晴興が、人間に戻ることができた、

そんな風に思えました。


そして、源太は晴興ほどに賢い人間だったはず。百姓のリーダーとなっていったこと、リーダーであることはごく自然な流れだと分かる。
支配される立場である自分たちが一揆を起こすことの無謀さは誰よりも知っていたし、一揆を止めることの難しさもよく分かっていた。
源太は、これも運命だと受け入れた。



晴興と、泉と、源太のバランスの良さが素晴らしかった。

トップスターがいて、トップ娘役がいて、二番手がいるという構成、タカラヅカらしくていいよなあと改めて思えた作品でした。
どんな形よりも安定するというか、、主要人物をそれぞれの比重て作れるから作り手としてもやりやすいのかなあ。


そしてちぎちゃんて360度美しいよね…!(震え)
お歌も安定してきた(気がする) し、変な癖なく演技できるトップさんは貴重だとおもいます。新生宙組まだみてないけど。あとみっちゃんもまだだ。

そしてみゆちゃんは末恐ろしい子です。これで研6とは。ちぎみゆのバランス◎

そしてそしてだいもん贔屓なので、ついに正式二番手としてここにいることが本当に嬉しくて、、それもあってこんな泣けたのかもしれません。笑
わたしも源太のお嫁さんになりたいです。。


今回は1階下手前方、2階席上手前方、1階席最後列上手側とお席を頂き、色々な角度から観ることができましたが、個人的に2階席からの視点が一番好きでした。
プロローグの灯りが天の川になっていて、その隙間からちぎちゃんが現れるところから始まり、星逢祭りの銀橋の迫力、そして最後の回想場面での満天の星空まで、舞台全体を使って綺麗に見えるように演出が工夫されていることがよくわかりました。


また、出演者一人一人が皆役者で、いまの雪組にしかできないし、いまの雪組が作り上げることができる最高のものを見せてもらえた感がすごくて、悲しいけれどとても良い余韻が残る作品でした。


いやあ、上田先生すごいっす。
今後のご活躍にもめちゃ期待!!!

そしてこれからも、ちぎちゃんには日本物を雪組の伝統として守り続けていただきたいものです。